「あら、篠原さん」
保健医は保健室常連のあたしの顔を見て、
困ったように眉を歪めた。
「最近ずっと調子悪いわね…。
今日はどうしたの?」
『お腹が痛いのと、寒気がひどくて…』
……嘘ですけど。
先生の授業に出たくないからですけど。
でも、彼女はあたしの苦しそうな演技に、
見事に騙されてくれて、
「そう、じゃあベッドで寝ておきなさい」
『はい…』
ラッキー、と心の中で呟いたのは秘密。
すぐにベッドにもぐりこんで目を閉じる。
「あ、篠原さん。
先生この時間終わったら……」
先生が何か言っていたみたいだけど、
眠気には勝てず、
夢の世界におちていった…。
「……すみません…本当…」
「…いえ……は、いつも大変…から」
…誰かの話し声で目が覚めた。
しかもかなりの小声で聞きとろうにも、
少ししか聞きとれない。
早くどっか行ってくれないかなぁ……。
なかなか終わらない会話にイライラして、
毛布を頭の上から被り、ギュッと目を閉じた。

