あれだけ震えていた足も、ちゃんと力が入って、
今こうやって昇降口までの道を歩いてる。
何だか嘘みたいだった。
今まで先生と過ごしてきた日々が。
先生のことを思ってた日々が。
ふと、その場に立ち止まって、
自分の髪の毛に触れる。
先生が、さらさらで綺麗だと言ってくれた髪。
そこには、先生の温もりさえ残ってなくて――。
『………っ』
―その時やっと、自分が泣いていることに気付いた。
バカみたいに、先生に溺れてた毎日。
それが崩れ落ちた時は、あまりにあっけなくて。
拍子抜けするほどで。
まだ現実を理解できていない、あたしの頭は、
悲しさにあふれた涙を止めることが出来なかった――。

