「邪魔するぜマスター」


先生はそう言って、どうやらいつもの席らしい、カウンターの椅子に腰かけた。


わたしはちょこんとその隣に座らせられる。


「おや?香月くん、今日はかわいいお客様を連れてるね」


マスターと呼ばれた初老の男の人は、会った人みんなを優しい気持ちにさせるような、そんなあったかい雰囲気の人だった。


しかしバーテンの格好が似合う。


そしてお店同様、落ち着いた物腰と声の持ち主だ。


「あぁ、コイツは深見佐和子だ。ちょっと世話になってな」


わたしのことなんかをそんなふうにさらりと紹介してくれる先生は、なんてかっこいい大人なんだろう。