「これ…」


テーブルの上に置かれたものを目の前にして、ゴクリと喉がなった。


情報源は推理するまでもなく、わかりきってるけど。


何しろ、このモデルルームのように、モノトーンで美しく統一されたリビングに似つかわしくない。


「…気に入らなかったか?」


コポコポと慣れた手つきで珈琲をいれる先生は、そのままCMにでも出れそうだ。


「大好き…です」


言ってから、目的語が入ってなかったと気付いて、妙に恥ずかしくなる。


でも、そんなことは先生にとっては何とも思わないことで…


「そいつは良かった」


その言葉と共に、何の飾り気もない、白いマグカップが差し出された。


先生がわたしのために用意してくれたのは、間違いなく、わたしが大好きな、駅前のケーキ屋さんの苺ショートケーキだった。