睨みをきかせるだけで人を黙らせてしまうような眼光も、今は大人しく閉じられている。


熱が苦しいのか、時々ピクリと眉間にシワが寄ったりするけど、


基本的に眉毛は垂れ下がり、無防備に口が少し開いてたりして。




かわいい…




わたしよりもずっと年上の、大人の男の人にする表現じゃないと思うけど、


勝手に顔がゆるんできてしまう。




「…早く元気になって、また素敵なお話、書いて下さいね…」


そう呟いた時、タイミングよく先生がんー…と唸ってドキッとしたけど、


どうやらまだ寝ているみたいでホッとした。




この分なら、大丈夫そう。


「…先生…お粥と、筑前煮も冷蔵庫に入れておくので…よかったら食べてみてくださいね…」


聞こえてるわけないんだけど、一応それだけ伝えておいて。


お母さんに電話をかけるために、寝室を後にした。