「それじゃ…帰ろうかな…教えてくれてありが―――」



「深見」



お礼を最後まで言い終わらないうちに、再び名前を呼ばれて驚いた。



正直、一日のうちで同じ男の子から二度も名前を呼ばれるなんて、内向的なわたしには皆無に等しい。



「あの…さ…」



さっきまでムスッとした顔で淡々と話していたのに、今度は妙に歯切れが悪くて言いにくそう。



「な、なに…?」



どうしよう…



何かわたししちゃったのかな…!?



森くんとは同じクラスだけど、こうして二人きりはおろか、こんな面と向かって話したこともないのに…