いつも手が止まるクライマックス。



大学生の主人公が、すれ違ってしまったヒロインを追って、いくつもの壁を乗り越えて告白をするシーン。



また再会できてよかったね。



誤解がとけてよかったね。



好きだって言えて良かったね。



一途に相手を想う主人公とヒロインを、序章からクライマックスまでの何百ページもの間応援し続けて、



ようやく願いが叶う最後、わたしは何度も泣いた



それなのに―――





「だめだ……」



そう呟いて、パタッと文庫本を閉じる。



何か見えないものをとじこめるように。