「香月くん、女いるわよ?」 「え―――」 何気ない日常の、何気ない会話のはずだった。 それが、たった一言で頭の中が真っ白になって、自分を立たせていたモノが一瞬にして崩れさるなんて――― 「さぁ子?」 お母さんの緊張感のない声が、右から左へ素通りしていく。 朝食の支度をしていたはずの手が全く動かなくて、 シューッとお湯が沸いたことを知らせる音だけが空しく響く。