ラブストーリーを一緒に

先生の手はごつくて大きくて、わたしの手じゃ全く包み込むことはできないけど、


母親が子供に抱擁する意味合いと同じように、ただ先生に触れていたかった。


先生の気持ちも、


どうして突然、先生がお母さんの話を始めたのかも、わたしには全然わからなかったけど。


先生の質問に、ゆるゆると横に首を振ってみせると、先生は少しだけ笑った。




「…俺はそんな母親がずっと嫌で嫌で、仕方がなかったんだ」


けれど―――


きっと先生が言いたかったのは、この次の言葉なんだと思った。




「最期まで、幸せそうに笑ってやがったんだよ。

それを見たら、つっぱってた自分がバカらしくなってな」


空想の中でも幸せになれるなら。


不幸だけを背負って生きていくより、マシなんじゃないか。