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「………ん?」
ランドセルの底面に、何かの紙がグシャグシャになっているのを発見した。
教科書やらを取り出してそれを引っ張り出して、
「あ゙――……」
ゴッホ用紙、ケバケバしい絵、原色のみ。
ぼくは花をイメージじして描いたのだけどな。
花に見えないんだなコレが。
ぼくの才能か?
いや、ぼくが下手なだけだ。
ド下手だよどうせ。
とりあえず、グシャグシャな紙を更にグシャグシャにして、ゴミ箱に入れた。
人間、絵だけじゃないさ。
ぼくはまたランドセルに教科書を入れようとして、
「…………」
もう一枚、紙が底でグシャグシャになってるのに気付いた。
取り出してみると、それもゴッホ用紙だった。
深く考えることもなく、ぼくはそれをゴミ箱に入れた。
天井から下がる電灯の紐を引いてスイッチを切り、ベッドに潜り込んだ。
布団の中で溜め息を吐いた。
今日、サエに言おうとしていたセリフを思い出し、少し顔が熱くなる。
今考えてみれば、「ぼくはサエが必要だよ」なんて言わなくてよかった。
何処のポエマーだよ。
左手を見た。
ぼくの手を握ってきたサエの冷たい手を思い出した。握りかえせなかった。
握りかえしたかった。
そう思うと、胸に何か刺さる様な気持ちになった。
やっと前に進めたかと思えば、また後ろに下がって、そんな事を繰り返して。
ぼくは何がしたいんだろう。
そんなんで何か起こるのか?
左手を握ってみる。
かなり頼りなかった。
この手で、何が掴める?