サエの母親は、外面は娘にも他の子にも優しい人だ。 飽くまで外面だ。 一瞬でも他人が目をそらしたらサエに当たる。 八つ当たりだったり、無性に腹立たしかったり。 ――自分は悪くない、横で見てたのに気付かなかったこの子が悪いのよ。 ――自分は悪くない、この子が要領わるいからつねるのよ。 ――自分は悪くない、普通の人間にすら成れないこの子が悪いのよ。 ――人間として接するだけ無駄。 ――ワタシのおかげで生きてるくせに。