インターホンの電子音が中で鳴っているのが解る程静かです。
「…………」
クロエは黙ってます。
「…………」
サエも黙ってます。
「…………」
北村さんも黙ってます。
「…………っ!」
富士原さんは黙らされてます。
彼の左には、彼の左腕のツボを押してる女が居ました。
大の男が、声も上げる事もできず――――涙目。
子犬の様な瞳で抗議の視線を送りますが、
「………ふっ」
嗜虐的な笑みを見せられただけでした。
こいつがいきなり、突拍子の無い行動に出るのには学習しました。
杞憂では済まされないと。
北村さん、段々富士原さんの扱いに慣れてきたみたい。
グッジョブ順子ちゃん。
「留守かな……?」
クロエは、念のためもう一度インターホンを押しましたが、やはり無反応です。
「ちょっと退いて」
北村さんはツボ押しを止めて、クロエを押し退けて、
「すいませ―――ん!」
回収業者よろしくドアを叩き始めました。
「北村さん」
「なあに?」
「それ、いいんすか?」
「警察手帳あるもん」
職権乱用だこりゃ。
北村さんはドアを叩いてない方の手を、ドアノブにかけました。
あまりに自然な動作だったため、クロエは何か言うのを忘れてました。
「お、開いてる」
カチャン、と音をたててドアが開きました。
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