だからなぜクロちゃんて言うの。
やっちゃった的に咳で誤魔化す人初めてみたよ。
「クロ、男は名前じゃなくてハートだ！」
「サエ、心遣いが余計悲しくなるんだよ」
「うぬすまん」
「富士原、代りに言って下さいな」
出端をくじかれるというか、自爆してしまった北村さんは、机に突っ伏して自己嫌悪しながら言った。
「意外に細かい事気にしますね」
「クロちゃん」と呼ばれたぼくより、呼んだ北村さんの方が落ち込むって、どんなだよ。
「絶対、富士原には続かないと決心してたもんだから……」
「へこみ過ぎです」
「黙れ」
「それはそうと、なぜ呼び捨てになってるのですか」
「もっかい言うよ、“黙れ”」
「たまには女らしいですね」
「うるさい産まれた時から女だから」
「じゃあ、“可愛い”」
「や め て く れ」
「なら―――」
「さっさと言え！」
「はい！ 順子さんは何か関係があると睨んでるわけです！」
「………？」「は？」「お前って奴は………」
富士原さん、普通にアレだ。
アレだよアレ。
間違いなく「態と馬鹿演じてます」ってアレじゃないから。
この人、ただの阿呆だ。
主語やら何やらが足りない。
一体何と何がどう関係あるわけさ。
理解出来なかった。
それなんだよな。
それなのに、何で「言ってやった！」的な顔して誇らしげなわけ。
やっぱりアレじゃない。
アレというよりコレ。
この人、ただの馬鹿だ。
断言出来るよ。
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