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「クロ、遅いなー……」
サエは、クロエの家の前の段差に座って、クロエが出てくるのを待っていました。
クロエが家に入って、十分弱。
まだ昼は暑いとはいえ、日が暮れれば肌寒くなります。
こんな所に女の子ひとり待たせるなんて、クロエは一体何処まで唐変木なんでしょう!
名前が女らしいからって!
「へくちっ」
サエがクシャミしました。
大変可愛らしいです。抱き締めてやりたいですが、変質者と間違えられそうだから止めておきますか。
「……チッ」
サエが舌打ちしました。
大変恐ろしいです。だから離れておきましょう。―――軽い二重人格ですねこの人。
「うるさい」
うっわー、地の文に話しかけてやんのー。
「…………」
睨んだ……。
サエは立ち上がり、クロエの家のドアを開けました。
ノック?
チャイムを鳴らす?
そんなのサエには通用しませんよ。
「クロー?」
頭を玄関に覗かせ、申し訳程度のボリュームで呼び掛けました。
暗くてよく見えませんでしたが、微かに人の気配がしました。
足音がしました。
少しずつ階段を降りる音です。
「クロ?」
足音が止まりました。
サエは全身が粟立つのが解りました。
何だか、とても不気味でした。
「クロなの?」
左手でライトのスイッチを探しあて、玄関の明かりを点けました。
「クロ――?」
また、次はさっきより大きい声で呼び掛けました。
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