ドアは少しだけ開いていた。
ぼくは、ゆっくり立ち上がると、ドアを押し開けた。
「父、さん……?」
ドアを開けると、そこには見慣れた後ろ姿があった。椅子に座り、頂垂れる様に背を曲げていた。
何故居るのだろう?
今日は病院に泊まると言っていたじゃないか。
何故居るのだろう?
床を見れば、小さな血溜りがが点々と続き、父さんの背後まで来てるのは見えた。
異様な雰囲気だった。
父さんの足元は夕闇に飲まれ、廊下からの光で淡く浮かび上がっていた。
ぼくは、手探りで寝室の電気のスイッチを探りあて、電源を入れた。
「……―――あっ」
今まで暗くて見えなかった足元に、大きな血溜りが広がっていた。
それが、何を意味するのか、解った気がする。
静かにしなくてはいけないわけではない。
しかし思わず、ぼくは足音を抑えながら部屋に入り、父さんに近付いて行った。
「と、父さん?」
呼び掛けても返事が無い。
背中を嫌な汗が流れた。
近付く度に足が早まり、最後は走る様にして父さんの前に回った。
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