「いったぁぁい!」
もし、此処がマンションとかだったら、絶対に下の階に住む人が「うるせー!」とか思いながら天井を叩いてる、と思う。
両親の寝室の前で、足を滑らせて一瞬滞空、そしてやはり重力に負けて床に尻から着地。
いや、只の尻餅。
結構痛い。
訂正、むちゃくちゃ痛い!
滲んでくる涙を拭おうと、左手を持ち上げて、
「………あれ……?」
掌に着いた液体を見て背筋が氷つく。
それは、時間が経って冷えきり、氷水の様に冷たかった。
見ればぼくが滑った所のそれは床に筋を引いている。半分乾いていたのか、元の輪郭だけが紅く残っている。
紅いのだ。
フラッシュバックしたのは、朝の光景。
胸元におひただしく染み込んでいた紅い液体。
…………血だ。
見ればそれは階段にも点々と続いており、一階に行ってる様でもあったが。
無意識に荒くなる息を整えるという考えは無く、ぼくは階段に着いた血から目をそらし、振り返った。
後ろについた右手を上げて見た。
血が着いている。
見上げると、そこには両親の寝室のドアがあった。
ドアノブに血が着いている。
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