僕の中の十字架

正直サエの一挙手一投足に一喜一憂している自分が、何故か口惜しく苛立たしいのだ。




前に、ぼくとサエが妙に仲が良いので、一度だけクラスメートの男子にからかわれた事がある。

太陽の様なサエに対しピンク色な何かで、ぼくに対しハラショーな嫉妬心が感じられた。

つまり、“そういう”意味。


「お前、宮崎のこと好きなんじゃないのー」


という、本音の裏返しの態度でサエに言った。
サエは、キョトンとして


「うん、好きだけど、クロ」


と、ナチュラルに。

「うん、好きだけど、カレーライス」と同じニュアンスで言って下さった。

なんだそれは。


ぼくに泣けと?


この件から、男子達はからかう事を止めた。

わかってるさ。
同情されてる………。


「元気出せ」


という有難い言葉まで下さった。

“そういう”好きじゃなくて、無印の好きだ。
家族同様の扱いなわけだ。


「べ、べつにっ、クロなんか好きじゃないんだからっ」


なーんてね。
そんなツンデレ風に言ってくれたら期待は出来るのにね。


………なーんて、ね。




サエは、もう太平燕の唄(自作)を唄ってはいなかった。

代わりに、とても悲しい旋律で、とても悲しい歌詞の唄を唄っている。

ぼくも知ってる歌手の唄だ。


サエは最近よくこの唄を唄う。

ぼくは聴く度に訊きたかった。



なんで?



それだけ。
なのに、怖くて訊けずにいた。

何かを壊してしまう気がして。
何も解らない自分が馬鹿らしくて。


………。


いや、本当は解っているのかも知れない。
だから訊かない。

だから、知ってる事も言えない。


「サエ」

「ん?」

「危ないから下りな」

「ほい」


ぼくはサエの手を引いて家まであと数分の道を歩いて行った。



さりげなく書いたけど、只今ぼくとサエは手を繋いでいます。

どさくさで。




.