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サエの家の前に、銀のセリカが何時もより静かに停車したのは、それから十分程経ってからである。
北村がいち早く車から降り、さっさと玄関に向かう。
その後ろから疲れ果てたチンパンジーみたいにノロノロとついてくる。
「てめぇ殺すぞ早く来やがれ――――――あらサエちゃん」
「足音が、北村弁護士と富士原っぽかったから」
「人間ばなれしてるね。――――弁護士じゃないから。それ行列出来るほうの北村だから」
二人の足音を聞いて、玄関のドアをそっと開いたサエ。彼女はひどく混乱していた。
「………サエちゃん?」
ひどく、混乱していた。
背にはランドセル、これは解る。登校時間だから。
片手にはゴルフクラブ、頭にはナイトキャップが。
「大丈夫?」
「うん」
「本当に?」
「うん」
「面倒だから適当に返事してるね?」
「うん」
「で、マジに答えるとどうなのよ」
「…………アワワワワワ……」
相当ダメらしい。
口を「△」にして、キョロキョロオドオドするサエをなだめすかして風呂場へ案内してもらう。



