僕の中の十字架




「待ってー」


「怖いんだろ? 来なくていい!」


「嫌です」


「どっちだよ!? 行くの行かないの!?」


「行く!」


「解った来い!」



何故か半泣きで出てきた富士原と、幼児と母親のような会話をする。

どうやら行く気にはなったらしい。



見上げる空にはもう日が昇りはじめていて、淡い光が目の奥に染み付いた。


藍色から碧へと変わっていく空を映す銀のセリカの助手席に座り、富士原は必然的に運転席へ。



「よし、今回はどんな乱暴なテクでも許すから!早くしろ!」


「ちくしょー………それを四時間前に腕の中で言って欲しかった………」



少々恥ずかしいことを悔しげに言いながら、しぶしぶ、といった様子でエンジンをかけた。



「やっぱ行きたくないんじゃねぇか」


「いや、“行く”とは言ったが“行きたい”とは言ってないから」


「あっそ。行け」


「今からでも遅くない、順子さんのマンション戻ってもう一回――…………」


「シャラップ!! 行け! GO!」


「……はーい………」









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