わー待った!
今の無し!
そう言う前に無理矢理黙らされました。
まぁ、必然的に富士原さんも黙ってしまうわけですが。
「………っ……〜〜〜!」
おや、北村さんが暴れだしましたよ?
「――っ!?……ちょ、痛いんだけど」
口を塞ぐものが無くなり、
「すぅぅぅぅ、はぁぁぁぁ……」
深呼吸を繰り返す北村さんを見る富士原さんは
「――――惜しかった」
と小さく悪態を吐きました。何が惜しかったのかね。
「もしかして、ファーストキス?」
「…………」
図星でーす。
「鼻で息するんだよ」
「あー、そうなんだ……」
「って事で、もう一回?」
「殺すぞ」
ひどいー、と全くショックを受けてない様子の富士原さんに、
「眠い」
「そうですか」
「寝る」
「そうですか」
「帰れ」
「そうですか。―――やだ」
なんなんだ、この二人。
「もっかいだけぇ!」
「遠慮するぅっ!」
「じゃあ離さない!」
「やだぁ! 離せ!! は、離して………っ」
「おとなしくしないと、脱がすぞ」
「!!!!!!!」
〈ヴ――………、ヴ――………ヴ――………〉
愛憎溢れる魔空間になりかけていた室内、テーブルの上で野田さんのハサミとともに放置されていた震動する二つ折りの物体―――北村さんの携帯に着信が入りましたよ。
「お、おわ――っとォ! 出なくては!」
「――ちっ」
非常識な時間に一体何処のどいつだ馬鹿野郎と思いますが彼女には天の助け、北村さんは富士原さんの腕を振り払ってテーブルへ行きました。
「はいもしもし! はい! お疲れ様です! ―――え? ……………。 ―――――マジっすか?」
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