一冊を手に取り、そっと表紙のホコリをぬぐった。

そしてガッカリした。

紅い布に金文字で書かれた題名は英語。

中身もびっしりと英語。

別のを開いて、またため息をついた。

それは日本語らしかったけれども、一面、ニョロニョロとうまいのか下手なのかよくわからない文字が踊っている。

とても読めるシロモノではない。

他のも似たりよったりで、探しているようなのは見当たらなかった。

ぼくはがっかりした。

きっとここにならあると思ったのに……泣きたいキモチだった。

「見つからなかったのかな?」

諦めて、扉の方へ向かいかけた時、誰かが言った。

店の奥の、「座り心地が良さそうだ」と思った揺りいすに、おじいさんが座っている。

さっきは誰もいなかったのに、いつの間に……?

後ろで束ねた砂色の髪、長く伸びた砂色のまゆ、鼻の下から骨張ったほおに伸びたドジョウのような砂色のひげ。

節くれだった指を変なカンジにねじくれた杖の上で組んで、前のめりに腰掛けた姿は、まるで中国の賢人か仙人のようだった。