「山梨さん。こないだはありがとね」



「う、うん…」


苦し紛れの愛想笑い。



「あのさ」


あたしは言った。



「好きだとか言ってくれたのは嬉しいんだけどっ」


少し朝倉君の顔が変わった。



「この前は嘘ついちゃったんだけど、あたし好きなひといるんだよね。だから朝倉君があたしを想ってくれても……答えられない」



言っちゃった。




すると朝倉君の顔がこわばる。


「ごめ…」

「いいよ。想ってても」



「…え?」



「山梨さんが好きな奴のこと想っててもいい。だからオレは山梨さんのことを想ってる」




初めて言われた。

少し胸が熱くなって、チクリ、と傷んだのは事実。



またあたしは断ることが出来ない。



「じゃあね、またっ」


朝倉君は、手を振りながら笑って走って行った。