「あの子どもかい? あの子どもならさっき親元へ返したよ」
セルディはムムに背を向けて窓を眺めながら答えます。
「そうですか? あの、さっきの出来事は一体……?」
ムムは、セルディに問い掛けました。
「さっきのは、悪魔のしわざだよ。悪魔は、人間の負の心に棲みつく。
おそらく、あの店の店主の不安な気持ちにうまく付け込んで、夢や希望を吸い取ったんだろ。で、あの店に住み着いていた妖精もそんな店主の姿を見て、自分の夢を忘れちまったんだろうね」
「あの子言ってました。ご主人がぼくに素敵な洋服を作ってくれたお礼に力になりたいって」
ムムは、小さな声で言いました。
「なるほどね。そこで悪魔にそそのかされて、鏡に閉じ込められ、鏡に映った人間の夢を食べていたんだね」
セルディは、険しい声で言いました。
「悪魔……」
ムムはセルディの言葉を噛み締める様にゆっくり繰り返しました。
「けど、大丈夫さ。悪魔は引き渡したし、街の人間の夢はちゃんと戻っている」
安心おしとセルディは、優しい口調で言いました。



