ハイスクールラブ

バスルームから出て、白いバスローブを着て、髪を乾かしてからベッドルームへ戻る。
紘季は椅子に座って、腕時計を見ていた。
真奈美はベッドに腰掛けた。

「それ・・・春人さんの時計だね?」

その時計は、事故の時春人がしていたものだ。事故の時間で針が止まっている。

「葬式の時に、ハルの母さんから渡されて・・・。どんな言葉で責められるよりこたえたな・・・」

きっとその時から、紘季の時間が止まってしまったのだ。

「お母さん、春人さんの話しながら笑ってたよ。藤くんのことも、もう許してると思う。だから、藤くんももう無理しないでいいんだよ」

紘季は時計を掌でぎゅ・・・と握った。

「そんなに・・・単純なことじゃない・・・」

真奈美は紘季の前に跪いて、手を重ねた。

「少しでも前に行けたらいいじゃん!藤くん、自分は幸せになっちゃいけないって思ってるんでしょ?でもそんなこと意味あるのかな!?」

紘季は首を振った。

「あの時・・・ハルが死んでるのを見て・・・俺は真っ先に何て思ったと思う・・・?
『俺は生きてる、俺じゃなくて良かった』って思ったんだ」

紘季の悲痛な声に、真奈美はドキリとした。
紘季の手がわずかに震えている。

「そんなことを真っ先に考えるような人間を、ハルが許すはずない・・・」

春人を失った悲しみと共に、自分の中にある’生き残った嬉しさ’が存在することに対して罪を紘季が感じていたのだということを、真奈美は初めて知った。

きっとそれを思い出す度に、自分に嫌気がさし、自分を呪うのだろう。だからこそ、こんな自分が死ねば良かったと思っているに違いなかった。