真奈美をじろりと睨む。紘季は吐いて涙目になっていた。
額を手で押さえ、ぎゅっと目を瞑る。

「もう・・・やめてくれ・・・!」

紘季が叫んだ。

「真奈美ちゃん、今日は帰った方がいい。駅まで送るよ。」

真奈美は重田を見上げた。

「やだ・・・!だって、今日は、今日が、6月29日が何の日なのか」

ガチャーン!!

ガラスが割れる音とテーブルが吹っ飛ぶ大きな音がした。
紘季がテーブルを蹴っ飛ばしたのだ。

まわりの人々が声を上げる。

「やめろって言ってんだ!」

紘季が真奈美に近づいて真奈美の服の右肩部分を掴んだ。

「もうやめろ!俺に近寄るな!」

重田と武石が紘季を止める。

「よせ!女の子だぞ!」
「紘季!手を離せ!」

真奈美はただただ震えて紘季の目を見つめた。
そこには深い悲しみしかなかった。

「藤・・・くん・・・」
「お前なんか・・・」

そう真奈美に呟いて手を離し、店を出てってしまった。

「紘季!」

重田が紘季の後を追う。

真奈美は呆然とし、力なく座り込んだ。
武石が真奈美を抱きかかえ、ソファに座らせた。

「なんで・・・?」

(私・・・何かした??)

真奈美は紘季の目と真奈美を掴んだ力の強さを思い出して恐怖に震えた。

なんで・・・。

紘季の声が頭から離れない。
真奈美は泣き崩れた。