あれから1ヶ月、週に2回ほど、来栖さんに教えてもらう日が続いている。


今日は来栖さんが来る日で、いつものように3人で勉強するものだと思っていたのに、家に訪れたのは来栖さん1人だった。

「えっ?お兄ちゃん、帰ってこれないんですか?」

玄関先で告げられた言葉は、お兄ちゃんが今日は用事があって帰ってこれないから、2人で勉強をしようという事だった。

「うん。ごめんね」
「用事ってなんですか?お兄ちゃん私にはそんな事…」

来栖さんが申し訳なさそうに誤っているのに、私はお兄ちゃんの事で頭が一杯でその謝罪を完全に受け流していた。

「…言えない事もあるんじゃないかな」
「なんですかそれ。お兄ちゃんは私に隠し事なんかしたことないんだから」

困ったような、それでいて呆れたようにも見える来栖さんに、カッとなって噛み付く私を見て、ふぅと小さく息を吐き出した来栖さん。