23時の情熱

目を開けると玄さんの呆れ顔がそこにあった。

「…げ…玄さん……」



「なんちゅうとこで寝てんねん、おまえは」

走って来たのか、鼻が赤い。
私の額に手をあてる。


「……高いな。なんか食べたんか?」

首を振る。


「やと思た。お粥やったら食えるか?」





そう言いながらキッチンへと立ち去る玄さんの後ろ姿を見ていると、何故だか不意に、涙が流れた。

「まったく…40過ぎのオッサンを全力疾走さすなよ…」



水の音。
ガスを点ける音。


ゴメン。

………ありがと。