土曜の朝。


まだ二人でベッドの中にいた。枕元のデジタル時計は8時時12分を示している。


そろそろ起きなきゃ………。

起き上がったその時、テーブルの上の玄さんの携帯が震えた。



バイブにしてるのか……。
玄さんは隣でまだ静かな寝息をたてている。

そっとベッドを抜け出し、携帯を手に取ってみる。

ディスプレイに、『真紀』と出ていた。







――――奥さんだ。




こんな朝から何だろう。

出るわけにもいかず、携帯を持ったまま立ち尽くした。


『休みの朝にどこにいるの?』

『誰といるの?』





会ったこともない奥さんの胸のうちを想像して、苦しくなった。






勘づかれないだろうか。


女といると疑われていないだろうか。



こんな時間に家に居なくて連絡もつかなければ、あらぬ想像をするかも知れない。