23時の情熱

帰り着いて部屋の灯りをつけると、携帯が鳴り出した。
着信の主は玄さんだった。
「瞳子?もうウチ着いたんか?
……それが、まだ二次会途中やねん。終わったらまた電話するわ」


「いいよ電話しなくても。もう寝るから」



玄さんの返事も待たずに電話を切った。





馬鹿みたい。

何勝手にヘコんで勝手に苛ついてるんだろ、私。



私だけが、辛い様な気がした。

私だけが、好きな気がした。



……片想いみたい。




約束された未来なんかない。
街を並んで歩く事も出来ない。
胸を張って好きな人だと言えない。



玄さんの言葉だけが、私の心を繋いでいる。



私には、玄さんの言葉しかない。



どんなに寂しくても、玄さんの言葉を信じるしか私には出来ない。



一方通行の様なこの想いに、今夜もまた、押し潰されそうになる。



電話なんかいらないから、逢いに来て――――。