23時の情熱

二次会に行こうと盛り上がる男性陣と別れ、私は駅へ向かった。
新入社員達のグループは、上司達とは別々でカラオケになだれ込む気らしく、誘われたがとても歌う気にはなれずに断った。



一人地下鉄に揺られながら、玄さんの事を考えていた。


私を好きだと言ってくれた、玄さんの言葉は信じている。でも、口にはしないが家族を捨ててまで私と一緒になる気はないだろう。

もちろん出来る事ならそうして欲しい。奥さんと別れて欲しい。家族なんて捨てて、私を選んで欲しい。


「奥さんと別れて」


よく昼ドラであるような、そんな陳腐な台詞が頭に浮かんだ。


―――言えないよ。



―――言える訳ない。




―――もし言ったら、玄さんはどんな顔するのかな………?