「誰と呑んでたかとか聞かないの」

言ってしまった。



キョトンとした顔で目を向ける。

「聞いた方がええんか」

「気にならない?」



「…気にならん訳やないけど。おまえかておまえの自由な時間ぐらいあるしな」

玄さんから表情が消えた。


自分で爆弾を投下しておきながら、少し後悔した。


こんなこと言っちゃいけなかったのかな。
愛人は相手に何かを求めたりしちゃいけないかな。


すっと立ち上がり歩き出すと壁のスイッチを押す。
フロアーの電気が消え、パソコンの青みがかった明かりだけが薄闇に残る。
暗くなったフロアーは窓の外から射し込む隣接したビルの明かりを取り込み、二人のシルエットを浮かび上がらせた。


俯く私に、玄さんが手を差し出す。


「おいで」