「浅田!!」
その言葉でまた我に返った。
前を見ると先生が僕の方を見て睨んでいる。
クラスメイトの視線もまた僕に向けられていた。
「浅田、今日はええ度胸してるやん。何ひとつ出さんと授業を聞く気なってないなあ。」
僕ははっと机を見ると何もない。
教科書はおろか、シャーペンひとつ出してなかったのだ。
「あ。」
僕は思わず声を上げた。
周りからクスクス笑う声が聞こえる。
「あ、ちゃうわ。罰として47Pの問3をやれ。」
そう言って先生は黒板をノックした。
僕は慌てて机の中から教科書を取り出すと黒板の前に立った。
ページをめくり問題を読むとチョーク使って書き始める。
余りにもスムーズに問題を解くからか、背中で生徒がざわつきだしたのが分かった。
先生、難しい問題をあてたつもりやろうやけど、甘いわ。
僕、数学は得意やで。
大体、教科書に載ってる問題って大したのないやん。
僕は答えを書き終えると静かにチョークを置いた。
先生が面白くないって顔をしている。

