泣けないワタシ 〜最後のナミダ〜

ワタシの目の前には、真っ黒なスーツを身にまとっている男が座って、喋り続けている。


あと数分後には接客する事を考えると、全然話がはいってこない・・・・


給料は思っていたほど高額ではなかった。ワタシを含め、世間はもっと高額な給料を貰えるものだと思っているらしい。



一通りの説明が終わった後に、全員に紹介すると言われ、別の部屋に移動した。



ドアを開けた瞬間ワタシはめまいがした。その部屋には絶対に仲良くはなれないであろう、きらびやかに変装した女達が一斉にワタシを見た。


男が喋りだす。

「今日からウチで働いてくれる・・・・あれっ?源氏名決めてなかったよね?」


男はワタシの方を見る。

「あの・・・・源氏名ってなんですか?」恐る恐る聞き返す。


「まあ、簡単に説明すれば芸名みたいな感じだね。本名でも構わないが、別の名前にした方がいいかな」


「本名の朋子でいいです。」

ワタシは何故、名前を変えるのか理解せずにいた。仮に、菜々子にしたとして、「菜々子」と呼ばれても反応できない。


ワタシは今日から『朋子』として、水商売という未知の職業をスタートさせた・・・・ この時はまだ何も考えていなかった。兎に角、働かないと・・・・それだけで精一杯だった。この時は・・・・・・・