カラン…コロン…と、どこからともなく下駄の音が聞こえてきた。

その方向を見ると、から傘をかぶった一人の男が歩いてきた。

男は、僕の前で立ち止まると、傘を差し出した。
「なぜ、ここに来たのかわかるか?」

聞きなれたその声に、僕はハッとして顔をあげた。

そこには、いつも仕事が忙しく、家庭を顧みない父親の姿があった。