”助けて…助けて…!”

紅い海から、たくさんの声が聞こえてきた。その声はだんだんと大きくなり、僕は思わず耳を塞いだ。

「僕は何もできないんだ…何も…何も出来ない…」

苦しげにそうつぶやくと、声はだんだんと小さくなり、ついにはすっかり消えてしまった。

血で染まっていた景色は消え失せて、美術館の白い壁へと姿を変えた。

僕は、くたくたになってピカソの部屋を出ていった。

この部屋で僕は、自分の無力さを、まざまざと思い知らされた。