それに対して男性の表情は真剣だった。
男性は他の客が差し出したハンカチと自分の鞄の中から取り出したタオルに残りの水を十分染み込ませると眞加辺の火傷部分と太ももの傷口にそれぞれあてた。


しばらくして太ももの出血が止まらないと判断するとさらに借りたタオルで太ももに止血を施した。




眞加辺を見守る中、車内は彼の痛みをこらえる声だけが響いた。


「…大丈夫…なのか…?」

大原が心配して声をかける。

少し経って男性の表情が和らいだ。
徐々に出血がおさまっているようだ。

「…………まぁ命に別状はないが、ここを出たら早く治療した方がいいだろう…。」
安堵の声があがった。


「…あなたは一体…?」
「…実は私、皮膚科の医師なんです。今のはあくまで出来る限りの応急処置なんです…。…もしここから出られたらすぐさま病院へ行った方がいい。場合によっては皮膚の移植も必要かもしれない…。……ひとまず隅の方へ座ってなさい。」
「…ありがとうございます…。」
眞加辺は深くお辞儀をすると痛みをこらえながらも隅の座席に座った。彼が通ったところは水滴が落ちていた。
大嵩 啓士(おおたか けいし)。名門学校を卒業していき、皮膚科の医師として地元では活躍し続けていた。32歳となる今でも容姿は格好がよいのだが、未だ独身である事実に周りの人たちは驚いていた。実際 彼は恋愛に関しては不器用であった…。先日同僚の女性とデートしたのだが、結局皮膚の構造について一人で盛り上がっていってしまい、以後気まずい関係が続いていた…。

今の爆発により2両目では混乱が見られた。
「…くそっ!なんて野郎だよ!!こんなのが軽い爆発だと言うのか…!?死んでもおかしくねぇんだぞ…?」
柄本の大きな声が響いた。