しかし今はそれどころではない。

すぐさま本題に入る。

「……た…立川、早く吊り革につかまるんだ…!」
「……無理…!できないよ…。」
立川は小刻みに首を横に振った。


「…だ…だけど…こんなことをしても死ぬだけだぞ…!」
「分かってる!…分かってるけど…さっきのアナウンス聞いたでしょ…?助かるのは一人だけよ…。いくら運動神経に自信があっても所詮女の子…まず無理だわ…。それに生き残ったとしても、みんなの命を背負って生きなければならないのよ…!そんなことできない…」
立川はさらに泣いた。








「…助かる方法を考えよう…。」



「えっ…?」

「……俺は一人でも多くの人が助かる方法を考えるよ!とにかく今はもうこうしている暇はないんだ!このままだとみんな死んじまう!」

確か電車が動き出すまでもうすでに30秒をきっている。
「…でも…!」
反論を聞く間もなくラインは立川の手を引き、吊り革に掴まらせた。



「…立川!絶対に助けてやるから…!」
小声でそう言うと、立川は着ているセーターで涙を拭きながらこくりと頷いた。


まだ吊り革につかまっていない乗客も諦めて次々吊り革に手をのばした。ラインも吊り革を掴む。