「おい、どうすんだよ!」
「こ…こんなの信じられっかよ!」
「みっくん…」
「兄ちゃんどうなってんだぃ?」
江口は酔いが覚めたようだ。

乗客12人が事態を読み込めず動揺していた。

そうしている間にも時間は進んでいっている。ラインは冷静になって乗客によびかける。

「皆さん、とりあえず落ち着きましょう…」
「こんな状況でどう落ち着けるというの!?」
赤ちゃんを抱いている女性が言う。
「そのお気持ちは分かりますが、とりあえずここから出られる方法とか…」
「それは無理だぜ、あんちゃん…」
先程脱出を試みて感電した『みっくん』と彼女から呼ばれている人が言う。
「見渡す限り出られる隙間もありゃしねぇ…これは、マジだぜ…。」
「じゃあわたしたちはどうなるんだ…わたしには妻や子供がいるんだぞ…!」
メガネをかけた中年の男が初めて言葉を発した。
「誰だってそうなんだよ!」
江口も初めて声を荒げた。
「私には失うものが今は無いから言える立場ではないかもしれんが、ただ誰だって死ぬのは怖いんだ!自分勝手な言動は慎め!!」
酔っていたとはいえ説得力のある発言に皆が驚きを隠せない。メガネの男は素直に引き下がった。