乗客全員がパニック状態に陥っていた。

「……どうすんのよ……!」
若い女性が言う。

その時だった…
車内に機械で変えている声で話すアナウンスが流れた。
「4両目にお乗りの皆さん、本日はご乗車ありがとうございます。この列車は 停車致しません…」

………!!

「……停車しないってどういうことだ…!!」
頭を抱えていた男性が立ち上がる。


「…皆様にはこれからゲームをしていただきます…」
あくまでもアナウンスは冷静に話す。

「……ゲーム…!?」

「…難しいものではございません。この列車を停めていただくだけです…」

「…お…おい!免許も持っていない俺達ができるはずないだろ…!」
他の乗客も表情が恐怖から怒りへと変わってきた。
「…だからゲームなのです…」
「…ふざけるな…!…こっ…こんなとこ出ていってやる…!!」
弱そうな若い男性がそういうと非常ドアの方へ向かった。
「…申し遅れましたが、車内の至る箇所にあるドアからむやみに出ようと致しますと高電圧がながれる仕掛けになっております。どうぞお気をつけください…」
その背中を通るような冷たい声にしびれをきらし、こじ開けかけていた手を止めた…。手にはヒンヤリとした感覚が残った。

「…お前ビビってんじゃねぇよ…!!ハッタリかもしれねぇだろ!?」
強気の男性は彼の胸ぐらを強く掴んだ。
「…じゃ……じゃあ…あなたが開けてくださいよ…。」
「…てめぇ……」
周りを見回すと『その通りだ』と言わんばかりの視線が集まっていた。
自分もいつの間にか彼に視線を向けていた。

「………わ…分かったよ…!…くそっ!!」
男は一気に非常ドアを開けようとした…。


その瞬間!バチバチという音と共に彼の手元が光り、体ごと強く吹っ飛んだ。
「……あぁーーーっ!痛てぇー!!痛ぇーよ!!」
「…キャーー!」
女性の悲鳴に合わせて乗客全員が引いた。
彼はまだ痛さでもがいていた。
「…これに触れ。」
突然静かに彼に話しかけた男が現れた。年は30代ぐらいだろうか…?
男は座席のサイドにそびえ立つ銀色の棒をさした。
虫の息で彼は棒につかまると、青ざめた顔が徐々に元の色に戻ってきた。

「……はぁ…はぁ…どうだ…!この根性なしが…」