なぜ父がそんなことを……?
まだ父の記憶は完全ではない…だからまだそんな命懸けで娘を守ろうとはしないはず…!

さらに………
「…こっちの安全を確認したら嬉しそうにお前の親父さんが最後のコードを切断したよ………俺らが切ったコードと同じ色のコードをな………」
永沼は不敵な笑みを浮かべてその場を去った…。

美倉は驚きを隠せない。

そんな………………。うそだ……!うそであってほしい…!!

そもそもなんで父がこの電車に………!?



「………お父さん…実はね……」
家に帰ると母親が突然話し出した…。

「…お父さんは………記憶が喪失してもわたしたち家族のこと一番に愛していたのかもしれない……。あの人は一生懸命記憶を取り戻そうと毎日 あたしにいろいろ聞いてきたわ…。いつ私たちは出会って、どんな場所へ行ったりもしたか………そしてナミはどんなことが好きで、どんな思い出を作ったか……なんてことまで………」
母親から一筋の涙がこぼれ始めた…。
「……一緒に電車に乗った思い出も、ナミを川から救った思い出もある……そんなことも話したら…お父さん今日はナミが電車を乗る様子を見てこようかな…なんて笑いながら言ってたわ…」
「………じゃ……じゃあ……!!」
目の前が突然ぼやけはじめた…。ナミからは大量の涙が出始めた……。

そう……父は私のことを知ろうとしてあの電車に乗り、さらに私と作った記憶をたどったのだった…。父と電車に乗ることは非常に多くあった。父は私の電車の中で見せる素の部分が好きでもあった…。携帯をいじったり髪を整えたり…。

そして…私たちの車両が解除に成功する少し前に、父はすべての記憶を取り戻したのだった。


それから私の安全を確認した上で父はあえて爆弾を爆発させた…。

この爆弾を爆発させて隣りの車両を勝たせればナミは生き残る……そう思ったのだった………川で救ったときのことを思い出しての行動だったのだ………

最後の最後まで私は父に愛されていた…
そのことに気付いていなかった………

「………わぁーーーん……!」
もう気持ちが抑え切れなかった…。
「…ナミ、どうしたの…!?……ほら、泣いてないで。…どう?お父さんに会えた…?」



「…………うん…。」