「お前、魔法使いたる私に、勝てるとでも思っているのか」
 俺の前で、長い髭を生やした、黒ずくめのおっさんが得意げに言った。

 「へぇーそうかい、そいつはすげえ、このいかれやろう」
 俺は片方の眉を上げながら、そいつに言い返した

 俺がここに来たのは犯罪の捜査のためだ。
 やつは、魔法の実験と称して、あくどいことばかりしてやがる。
 具体的には、イモリの黒焼きを作り、惚れ薬と称して数多く売り飛ばし、金を稼いだ詐欺の疑いだ。

 だが、本当は詐欺なんてどうでもいい。
 イモリなんて、あんなかわいらしい小動物を数多く殺した罪を償わせてやる。

 俺はそう思いながら、右手に持っている銀色の物体を持ち上げた。
 やつもそれを迎え撃つように、右手の杖を持ち上げて、なにかつぶやく。

「ふん、馬鹿が」
 動物に対する愛情が俺の右手から光線の形であふれ出し、赤い光線がやつを直撃する。

 ああ、そうだ、思い出した、これ、光線銃だ。

 やつは、光線の直撃を浴びて、黒く炭化して床に転がった。
 何が魔法使いだ。とち狂いやがって。

 いまや、人間はものを考えるだけで、物を動かすサイコネキス装置を開発し、レーザーガンで人を殺すことが出来る時代にだと言うのに。

 この、二十三世紀の世の中では、すべての機械を自由自在に使いこなせる俺こそが魔術師だ。

 そう考えながら、俺は黒く炭化したそいつの体を裏返した。