桜が舞っている。
別れましょう、君はそういった。
僕たちの卒業を教えるように悲しみを誘う蛍の光の曲が校庭にも流れてきている。
その時風が吹いて、一際たくさんの桜が舞い、光の中を花びらが踊った。
「そう、それじゃあ、明日から別々だけれど、元気で」
僕は寂しい気持ちを押し殺してそういった。
「うん、あなたも元気で」
君が病気だと聞いたのはそれから十年後の事だ。
病室で、真っ白いシートに囲まれている君は、まるで年を取っていないかのように見えた。
「お母さんこの人誰」
窓のほうを向いて寝ている君の側で、小さなナイトが、僕の存在に異議を唱えた。
「いいんだ、誰でもないよ」
僕はそう言って、静かに花束を花瓶に入れるときびすを返した。
「ゆき、ふってきましたね」
ベットにいる、白い妖精が窓の外を見ながらささやいた。
「まるで、桜吹雪のよう」
「……はい」
僕はそう、小さく返事をすると、振り返らずに病院を出た。
彼女の言うとおりだった。
外は雪が降っていた。
……まるで、あのときの桜吹雪のように。
別れましょう、君はそういった。
僕たちの卒業を教えるように悲しみを誘う蛍の光の曲が校庭にも流れてきている。
その時風が吹いて、一際たくさんの桜が舞い、光の中を花びらが踊った。
「そう、それじゃあ、明日から別々だけれど、元気で」
僕は寂しい気持ちを押し殺してそういった。
「うん、あなたも元気で」
君が病気だと聞いたのはそれから十年後の事だ。
病室で、真っ白いシートに囲まれている君は、まるで年を取っていないかのように見えた。
「お母さんこの人誰」
窓のほうを向いて寝ている君の側で、小さなナイトが、僕の存在に異議を唱えた。
「いいんだ、誰でもないよ」
僕はそう言って、静かに花束を花瓶に入れるときびすを返した。
「ゆき、ふってきましたね」
ベットにいる、白い妖精が窓の外を見ながらささやいた。
「まるで、桜吹雪のよう」
「……はい」
僕はそう、小さく返事をすると、振り返らずに病院を出た。
彼女の言うとおりだった。
外は雪が降っていた。
……まるで、あのときの桜吹雪のように。

