生物兵器とは、ウイルスやバクテリアなどのいわゆる病原菌をばら撒く兵器。


 化学兵器は、サリン、マスタードガスなどに代表される、科学が作り出した死の薬だ。


 結局、どれにしたって、この大地を荒廃させてしまうのは変わらないじゃないか。


 希望の新兵器か。


 希望ではなくて破壊をもたらしに来たのかもしれないな。


 それが分かっていても、僕は思わずこみ上げてくる笑みを抑えることが出来なかった。


 もちろん人を殺したくて浮かんだ笑みじゃない。この戦争に勝ち、生き残る事が出来る希望を見出した笑みだ。


 それでも、人殺しは人殺し、人でなしとけなすならけなすがいい。ここは敵を殺す事でしか生き残る事が出来ない戦場なんだ。



「おい、お前ら、ついに俺たちのところにも新兵器が到着したぞ」


 急に班長のどら声が後ろで鳴り響いて、僕は振り向むいた。


 白い弾薬箱を抱えた、背の低い軍曹が得意げに立っている。


「新兵器、これがですが?」


 弾薬箱の中に入っていたのは、直径二十センチ、長さ五十センチほどの、薄緑色の砲弾だった。


 見た感じ、普通の榴弾と何も変わらないように見える。


「ああ、良いから、黙ってこいつを奴ら目掛けて撃て」


 いたずらっぽい笑いを見せながら、班長が言った。


「は、はい」


 僕とトニーは怪訝そうな顔を見交わしながらも、その箱を受け取った。