「強烈な威力の、新兵器が到着するらしい」


 そのニュースが、戦場を駆け巡ったのは、その日の朝の事だった。


 赤道近くにある熱く貧しいこの国では、今も少ない物資をめぐって戦いが繰り広げられていた。


 少ない水を求めて、お互いの赤い水を流し合い。


 僅かな食料を確保する為だけに、その身を単なる肉塊に変えるような日々。


 戦争


 金持ちや、力のあるものはすでに逃げ出してしまったこの希望のない国で、新たにもたらされた望みがその新兵器の噂だった。


 噂によれば、その新兵器はこの悲惨な戦争を終わらせる可能性すらあるらしい。


「新しい兵器か、さぞすごいのだろうよ。だが、まさか核兵器じゃあるまい」


 僕は鉄のヘルメットから滴る汗を、迷彩服の袖で拭いながら呟いた。


 隣には、僕が担当する殺しの道具、迫撃砲が据えてありその向こうには砲手でもある親友のトニーが座っている。


「いや、エディ、核じゃないらしい。でも、すごい物らしいぜ」


 そう言って、トニーは白い歯を覗かせた。同じ人種の僕が見ても、トニーの黒い肌に真珠の様な歯は良く似合っている。


「それじゃ、生物兵器か」


 僕は空を見上げながら言った。


 紺碧の空を飛行機が通過していく。


 あいつがこんな所にでかい爆弾を落とさないと分かっていても、その音を聞くとつい見上げちまう。


「そりゃわからん、だが、俺たちの迫撃砲班にまで支給されるって話だ、もしかすると化学兵器かもしれないな」


「そうか……」


 僕はそこで黙り込んだ。