あなた方は、一目ぼれをした事はあるだろうか、私はあるのです、それも心が、いや魂が震えるような恋を。
 彼女は腰まで掛かる美しい黒い髪と細く美しい四肢をもち、陶器のような白い肌をしていた。
 中でも美しいのはその顔だ。
 私はその顔を最初見たときに、文字通り時間が止まるのが分かったぐらいだ。
 神がこの世に使わした、本当の美の女神それが彼女だった。
 私が彼女にあったとき、彼女は眠り姫のように、深い眠りに着いていた。
 この眠りはもうさめる事はない。

 何故なら、彼女は死体だったからだ。

 私が、死体処理の仕事を始めるようになったきっかけは、医大の先輩の言葉がきっかけだった。
 こういう仕事は、医大では伝統的に先輩から後輩にバイトとして受け継がれてきたのだ。

 島田理香、それが彼女の名前だった。
 死因は胃がん。
 そのガンが全身に転移していた。
 私は彼女はそのカルテを見た瞬間に、例の実験を実行に移す決心をした。
 そう、死体に命を吹き込むのだ。
 この実験は私が医大に入った時から暖めていた物だった。
 けっして、誰も認めようとはしない実験、ついにそれを行わなくてはならない。
 神は決して私を許さないだろうし、社会も親もそうだろう。
 でも、だから何だというのだ。
 彼女への崇高な愛さえあれば全ては正当化されるのだから。
 彼女を蘇生するに当たって、まず初めに取り掛かったのは、これ以上の脳細胞の死滅を食い止めるところからだった。