辺りが急に暗くなった。
体が震えてきた。




「…何を言ってるんだ」


「姉は幼い頃から心臓が弱くて、学校も休みがちでした」


「―でも、あなたに会ってからの姉は別人の様に明るくなって幸せそうだった。両親に反対されながらも、絶対学校には行くって…あなたに会いに行くって…あんな強く親に歯向かった姉は初めて見ました」



―嘘だ…嘘だ…嘘だ



「でも、やっぱり体はついていかなくて、確か、あの夏頃から体が急に悪化して、移植のためにアメリカに行きました。」


「ドナーが見つかって手術は成功したかに思いましたが、移植した心臓が体に合わずにそのまま…」




「―…彼女は一言も…」


「姉はあなたにだけは絶対言わないで欲しい、ずっと家族に言い続けていました。」

「……そんな…」

「姉は『彼は優しいからきっとずっと付きっきりで看病してくれる、そうなると、別れが辛くなるから言わないで』って…」
彼女も最後は声を詰まらせていた。


「……聖美……」

「健人さん、姉からの手紙、呼んでくれましたか?」

「―…手紙…―?」


「あの手紙、姉が死ぬ間際に書いたものです。絶対に、見て下さい」