(―嘘だろ?何で、覚えてないんだよ。聖美…)

しかし、健人は聖美の後を付けた。

すると、駅前のすぐ側の花屋に入って行った。

健人は向かえのコーヒーショップでずっと彼女を待ち伏せしていた。

聖美はエプロンをしながら、花屋の店員として働いていた。

(相変わらず、花が好きなんだな)

日も暮れて、彼女がやがて店をたたむ準備をしだした。

健人は煙草を消し、コーヒーショップを出た。

「これ、下さい」
健人は聖美に言った。

聖美は怯えた表情を見せた。

「あなた、さっきの…!」
聖美は声を出し、逃げようとした。

健人は聖美の腕を掴んだ。

「離して下さい!警察呼びますよ!店長!助けて」

「聖美、俺だよ!健人だよ!高校の時、付き合ってただろ?!お前にずっと会いたかったんだよ!」


すると彼女の動きが止まった。

「聖美…?」

「思い出したかい?」

「どうした?」

店長と言われる中年の男が出てきた。

「…大丈夫です、店長」


彼女は悲しそうな顔を見せ、健人を見た。

「姉の知り合いです」