「来ないって、何で?」

「さあ?先生も何も言わないし。何でかな?」

(今度、聞いてみよう。でも、もしかして嫌われた?俺…)
かなり落ち込んだが、彼女の想いは膨らむ一方だった。

教室で失敗したので、花壇で声をかけることにした。

聖美は花をただ眺めていた。

健人は聖美にどうやって声をかけるか迷っていると、聖美が話しだした。

「こうやって、花を見てると、嫌なこと忘れられるの。」

「何か悩んでるの?」

聖美は何も答えない。

「じゃ、僕が君の花になる」

「え?」

「嫌なことを忘れられる様にする。いつも笑顔でいられるよう頑張るよ」

「だから、毎日学校に来て、僕と会わなきゃいけないよ」

「ええ?」
「あ、あとこれ!やる!」

「…これ」

折り紙のユリの花を聖美の手のひらに置いた。

「本物の花だと、怒られるかもしれないから」

聖美はしばらくユリの花を見つめて、吹き出した。
「…下手くそ」
また彼女の笑顔が見れた。
―この笑顔を見られるなら、何だって出来る。

そう思った。