彼女の正体はそれからすぐ分かった。

学校の朝礼で校歌を唄う時に、彼女がピアノの伴奏を弾いていた所を見つけ、すぐ手当たり次第に彼女の正体を聞きだした。

名前は百瀬聖美、同学年のE組だったことが分かった。

「―百瀬さん」

彼女のクラスに行って同じサッカー部の友人に会うふりをして、彼女に声をかけた。

「―あ…」
「同じ学年だったんだ」
彼女は一瞬困った様な表情を見せた。

「また会えた」

「健人~!何してんだよ
。お二人さん!怪しい~」
サッカー部の連中が冷やかしてきた。

「そんなんじゃ…」
彼女は立ち上がり、走り去っていった。


「―あ、逃げちゃった」
「お前ら…いい加減にしろよ~!」
「意外だな。健人があんな目立たない子がタイプなんて」

―彼女が目立たない?
あんなに綺麗な女の子はきっとどこにもいない。

「百瀬ってあんまり学校来ないよな」