「つまり、だからあの時コップを持てなかった?」


「そう。まぁ術を媒介にすれば動かすことも出来るけど、実態を持たない私に飲食することは無意味だし、無理なの」


「でも俺は、その‘‘記憶’’を持っているからアメリアさんに触れた」


アメリアは頷く。


「でも言った通り、私の世界は悪魔に侵食されつつあるから、記憶を投影することが一時的に不可能になると思われるわ。いえ、おそらく確実に」


「そうなるとどうなるんですか?アメリアさんが消えちゃうとかですか?」


アメリアは俺の発言にプッと小さく笑う。


俺は何か間抜けなことを言ったのだろうか?今までのアメリアの話を聞けばそういう風に考えると思うんですけど。


「そんなことないわよ。一週間の内2日間。私はこの世界の法則に縛られることになると思う」


「どういうことですか?」


「だから、術も使えなくなって、星の重力に捉えられて、挙句の果てにはこの世に実体を持つことになるってこと」


一瞬の間を置いて、


「え?え?実体って。え?」


「この世界にとっては私のような‘‘記憶’’だけの存在は不自然だから、世界は私を強制的に自然な形に持って行こうとする。その結果、肉体を持つことになる。分かった」


おィィィィィィィィィィィっ。それこそ不自然だろうがっ。なんで結果肉体を持つんだ!?


もう嫌……。


「まだこっちに来てから1日しか経ってないから何曜日にそうなるかは分からないけど。とにかく一週間の内2日間はそうなるわ」


アメリアは驚愕に声を失った俺とは対象的に涼しげだ。